ぼくがすすめるがん治療

(近藤 誠/著:文芸春秋)"> ぼくがすすめるがん治療-<p>がん治療についての放射線科医による解説書。手術のみに限られないがん治療について。</p>

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ぼくがすすめるがん治療

納得の行くがん治療を受けるにはどうしたらいいか、という観点から書かれたがん治療についての一冊です。

つまり、背景には、到底納得のいかない治療が得てして横行しているわけです。

納得というのは、患者という立場からの納得です。

ある治療法の、副作用の有無、寿命の延長、合併症・後遺症の有無、その他の治療法はあるのかどうかまで、きちんと踏まえたうえでがん治療を受けるべきという筆者の主張が続きます。

基本的におさえておかねばならない背景は、、日本のがん治療は手術がメインで、筆者の専門である放射線治療はがん治療においては傍流、または手術後の補助治療にある点です。

ですから、放射線治療寄りの記述になっていますが、しかし、がん治療というのは即手術でもないという事実をおさえられる点、論拠を得られる点で優れているかと思います。

一般常識的におさえておきたいのは、まず7章の「臨床試験とホスピス」です。

治験の第1相試験が毒性試験であること、治験に選ばれる人は専門家によって治らない判断された患者であること、多剤複合治療が化学療法での標準医療であるのに、第1相試験では1種類しか使われないことからまず治る見込みはないこと、など、ぎょっとする事が書かれています。

「新しい薬を試してみましょう」という医者の台詞にピンと来ない人は、本題分を支払う価値はあるでしょう。読んだ後、それは事実上の死の宣告であるわけですから、ぞっとするはずです。

次に目を通しておいてほしいのが、第12章の「諸臓器のがんの治療」です。本章では家庭の医学書を紐解いて、手術偏向になりがちな現状のがん治療を書き出しています。あーこういう書き方をされていたらそうなっちゃうかもねという、一種の誘導記述の例をおさえておきましょう。

本書を読んで思うことは、医者というのは、病気を治す人たちであるということです。何を当たり前の事を言っているのかと思われるかもしれませんが、「個」としての患者を治す人ではないのです。

患者と病気とのどちらかを取るかというなら病気のほうなのです。医者=病気を治す人=病気の専門家という論理を踏まえて、がんというものを見れる人が増えればと存じます。

医者の論理というものをしっかり理解してほしく思います。

内容は難しくなく論旨一貫しており、中・高校生でも読める一冊です。命の大切さを教えるよりも、この一冊で「現在」という時代に生きるわたしたちの命について理解を深めるのが先決かと存じます。

< 作成日 2010/03/07 >


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