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がん治療総決算
がんの治療について、ボリューム、質、内容ともによくまとめられた1冊です。本書を読めば、がんについて大きく目が開かれるはずです。久々の☆3つの本となりました。本棚にあっても損はまったくないかと思います。
本書はがんについて全般的によくまとめられているかと思います。
がんの性質から(例えば、がんが見つかったとしても、分裂の速度から、そのがんは数年も前からあった。だから特別な場合でもない限り即切らねばならない理由はない)、手術、抗がん剤治療、放射線治療、その他の治療、がんにかかったときの備え方、セカンドオピニオンの得方などなど、です。
がんについてほとんど知らない人は、がんの性質について知っておくと良いかと思います。がんそのものは確かに死を誘うものでありますが、必ず痛みや苦しみがあるわけではないことがわかれば、恐怖もやわらぐかと思います。
本書のみならず、近藤氏の一連の著作を読めば、がんへの意識、特に恐怖は一変するように思います。苦しくて痛いのは手術や抗がん剤治療が主たる原因で、がんそのものはそれほどでもない(進行すれば痛みを感じなくなる)ことが理解できるかと。
そして本書を読んで思うことは、死についてです。抗がん剤が効きにくいのは、がん細胞自体が正常細胞とよく似ているためです。というか、がん細胞自体はもともと自分の細胞であったのです。
自己でありながら非自己である存在。少し哲学的な言い分となりますが、生きつつ死ぬわたしたちと同心円ではないかと思うのです。
精神分析学のフロイトは晩年、死の衝動を提唱して例証されましたが、がんという存在を知れば、死のうとする自身を認めないわけにはないように思います。がん細胞も宿主であるわたしたちが死ねば死ぬはずなのに増殖するのです。
わたしたちは生きつつ死んでいるという、日常生活では忘れていることに、わたしは思いを馳せました。
以下抜書き。
「がんとの共生といっても、不老不死を意味はしないのです。しかしがんは、逆らわなければ、人を安らかに死に導いてくれます。がんとともに生き、ともに滅ぶ。それが、がんと共生するということの本当の意味ではないでしょうか」
「生き続けることに過度にこだわると、悲惨な最期を迎えかねない背理があります」・・・絶対矛盾的自己同一という言葉がよぎったわたしでした。
< 作成日 2010/03/07 >
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