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白洲正子美の種まく人
白州さんと各分野での美の職人さんとのふれあいを通して考える、「美たるとはなにか?」が、この本のテーマです。
ぶっちゃけ、難しく考えないで、読むのがピッタリくるかと思います。
目には、まず、美しい写真が飛び込んできます。
読むに先立って、目が楽しんでしまう、素敵なひと時を過ごすことができるでしょう。
構成は、職人さんの白洲さんの往時の思いでを語ります。
そして、次に、白洲さんの、職人さんたちについて書いた文章が続きます。
なんとも、ハムハムふむふむと、美意識とはココまで高められるのかと、愕然とする思いでございます。
それほど、個性的に美を追求する「職人」と「白洲正子」という姿が、印象深く心の入り込むのです。
しかも、差し込まれた写真は、素敵なものばかりなのです。
美が「心に忍び込んで」くる肌触りは、たくさんの写真のステキさが原因なのです。
本書に収められた写真は、おそらく20年後になっても、「美」が色あせることのない、本当の美といえる写真です。これだけでも、十分おなかがいっぱいになります。
そのくせ、巻末には「清少納言」という、白洲さんの作品が掲載されています。
どこを切っても、「血」が吹き出る文章と存じます。すばらしい読後感を味わえます。
「現代に生きる清少納言」と、申しましょうか、白州さんの語る清少納言像は、いま、平成の世にあっても色あせないのでございます。
『清少納言』の原稿は、昭和20年の脱稿です。それなのにいまでも、読むと、イキイキと自分の中に「清少納言的」な感覚が宿るのでございます。
読んだあと、近くの商店に野菜を買いに行ったのです。
すると、普通では気にもしない事柄に「いとをかし」を感じるのでございます。
自転車に乗ったわんぱく坊主どもが「虫かご忘れた!」「あほー!」という会話ですら「をかし」。
信号が変わり、いざ自転車を漕ぎ出すも、耳に当てたアイポッドのイヤホンがズレ、自転車を走らせながら、イヤホンを入れなおしながら、音楽を聴きながら、岐路につく年のころ、15、6の女の子に「をかし」。
公園で、ブラッシングを気持ちよさそうに受けている犬と、それを見ている散歩中の犬も「をかし」。
買い物の往復に、コレまでにないおもしろさを見出した次第でございます。
読んだ人には、「美の種」が、きっとどこかに根を張り出すのを実感できるのではないでしょうか?
< 作成日 2006/09/19 >
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