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茶の世界史

「茶」をテーマにした、お茶好きにはたまらない本。茶の歴史についてですが、個々は1つの読み物として読ませてくれます。1章読むたびに、お茶を飲みたくなるかと思います。

お茶というのは、身近にありながら、いまいちよくわからないものです。たとえば、お茶というのは何科の植物なのか、おそらく千杯万杯飲んだ人でも即答はできないでしょう。

答えは、「ツバキ科」で、お茶となる木は1種類しかないのです。

お茶はツバキなのか〜と、まずここで、一杯飲めるかと思います。

本書には、こうしたお茶にまつわる知識で一杯です。実によい、教養となるでしょう。

構成としては、お茶の歴史の始まりである、中国の神様「神農」の話から始まり、イギリスと紅茶、コーヒーとお茶、お茶の飲まれ方、お茶の種類、お茶と貿易、密売と税金、お茶とアメリカの独立との関係、アヘン、お茶と植民地支配、現代でも続く植民地支配の残滓、それを解消しようとするフェア・トレード運動、戦災とテロによる疲弊からの脱出のためのお茶の生産とそれをサポートする人たち、など、古代から現代までのお茶の推移が読めるかと思います。

知らないことを知るのは実に楽しい事ですが、本書はその楽しさを十分にもたらせてくれるかと思います。

そして、あまりに当たり前になっていて見えなくなっている、現代のお茶問題を提起しています。

中学生か高校生が、夏休みの自由研究で本書を読めば、かなりいいものができるかと思います。

もちろん、いい大人の方でも、読めるように思います。少し値段が張りますが、内容のある損のない一冊です。


・個人的メモ:
茶道は中国の道教に端を発している。または、道教の影響が強く見て取れる。

磚茶(たんちゃ)−チベットやモンゴルで主として飲まれる、ブロック状の茶。砕いて鍋で煮て飲む。ブロックにするのは持ち運びをしやすくするため。貿易商品。

17世紀、イギリスでは男性がコーヒーを飲みまくって、カフェに入り浸ったために、夜のお勤めが減った。婦人連からコーヒーを弾劾するパンフレットが発行された。コーヒーを飲む男性は、寄せ集めの民兵のように頼りなく、発射も1発か、下手をすると空砲となると散々に言われた。

茶器が西洋に渡ったのは、お茶を船で運ぶ際のバラスト(バランスをとるための重し)用だったから。濡れてもいいし、重さも手ごろ。マイセンその他の西洋磁器は源流は中国。もちろん、日本の磁器も同じ。

カメリアシメンシス。お茶の正式な分類上の名称。

ティとチャは、広東語と北京語の読みの異なりから。広東圏(マカオ、アモイ)ではティ、北京圏ではチャ。西洋ではTEAとなるのは海上貿易で広東経由のお茶が多かったから。チャと呼ばれるところは、北のシルクロード経由で運ばれたお茶。


茶の世界史―中国の霊薬から世界の飲み物へ

(ビアトリス・ホーネガー/著:白水社)

< 作成日 2010/08/04 >


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