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がんは切ればなおるのか

「がんは手術するしかない」「手術をしなければ助からない」−このように考えている人なら、読む価値があります。是非とも読んでほしく思います。がんに対する理解が大きく増えるかと考えます。

本書にて筆者は、「がんもどき理論」を提唱しています。がんというのはすべてがすべて、転移や進行をするものではなく、がんによっては大きさが変わらなかったり転移もなかったりするがん(がんもどき)もあることを主張しています。

つまりは、がんもどきなら手術をしてもしなくても、予後は変わらないというわけでして、手術で臓器の一部なり全部を切除して生活に大きな支障を被るくらなら手術をしなくてもいいではないかと、患者利益の点からがん手術の当否を指摘します。

では、がんもどきではない、本当のがん(進行がん)なら手術をすればいいのか、というわけですが、これについても筆者は疑問を呈しています。なぜなら、本当のがんであれば転移能力もあり、手術をする段階で大方他の臓器に転移が完了している、と述べます。

手術をして取りきったはずなのに転移したがんが大きくなったり、取りきれなかったのか再発となることはたくさん聞くケースです。

そこで筆者は言うのです。本当のがんなら、手術をしようがしまいが再発するか、または、転移したがんが大きくなるなら、臓器を切除して苦しい目に遭うよりも、抗がん剤で強烈な不快感を被るより、手術そのものでの術死、合併症・感染症のリスクを追うよりも、切らずに余生を過ごす方がいいのではないかと述べるわけです。

また、がんの治療は手術や抗がん剤のほかに、放射線治療で済む場合もあるわけで、患者は自分でしっかりと治療の方針と方向性、そして、メリットとデメリットを知らなければならないと述べます。

医者への盲従は危険であり、最も損をして不都合を被るのは患者である自分であることを知ることができました。

わたしが本書で1番勉強になったのは、これまではぼんやりとしかしていなかった、がんについての理解です。

がんは漢字で「癌(岩石を意味するとのこと)」、英語でキャンサーといいますが、実に納得できました。

本書にて乳がんが進行して皮膚を飛び越えてがん化した写真が一枚掲載されているのですが、表皮を超えて出てきたがんはまるで岩のようで、だから「癌」となったと記されています。

そして、外気に触れて死滅したがんがぽつぽつと白くなって泡のようになっていることから、英語で「キャンサー(かに)」となったのでは?と筆者は述べますが、そうだなあと思いました。

最初に写真を見たときは、ゲゲとなるかもしれませんが、この被写体の方はこうなるまで痛みがなかったという一文を読むと、なんとも安心できるかと思います。こうなるまでは、痛みについては大丈夫というわけですから、少しがんに対する恐れというのは和らぐかと思います。

ちなみに、がん=苦しい病気と思っている人は、それは、手術による後遺症、抗がん剤治療が過酷なだけで、がんそのものは死に到るものですが、それほど苦痛を呼ぶものではないということを本書で読んでおいてください。

(つまり、がんによって臓器の働きが鈍り、心不全なり腎不全なり肝不全にて意識が混濁しつつ身罷るとのことです。やすらかな死といえるかと思います。)

がんについて知る一冊。読んでおきましょう。専門用語が少なく読みやすいです。中学生でも理解できます。



がんは切ればなおるのか

(近藤 誠/著:新潮社)


< 作成日 2010/02/20 >

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