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医原病
これまでにあまり語られなかった医療について述べる本。これまでの筆者の本をコンパクトにまとめた内容。
本書で勉強になるのは、健康診断や検診についての理解です。上記ふたつは健康にいいと思われてますが、一概にそうではないことを本書で明らかにしています。
筆者は、検診を受ければ寿命が延びる(本書内では死亡率が少なくなる)という明白な根拠がないまま、検診=よいという説が広まっていると主張しております。
病気の中には、また、人によってはプラスに働く事もあるかもしれないが、大半の人は要検査・再検査の文字におびえて不安になるなどのデメリットもあることを指摘しています。
1000人のうち実質1人しか本当の患者が居ないのに、1000人を検査し、50人の検査者を選抜して検査するのは大いなるロスではないかというわけです。実質病気ではない999人の不安や手間はどうなのか、しかも、検査をして全体の死亡率は変わらないというデータが更にむなしさを増やします。
わたし自身、筆者の本を読むまでは無批判に、予防医学や検診、診断というものはいいものだと思っていましたが、そうでもない知って目から鱗が落ちた次第です。
ではどうして、確かな根拠やデータもなく、世に検診等があるのかというと、まあ、それは業界と行政と医療との馴れ合い・商売であると説いています。
医療というのは確かに効あるものですが、信仰や過信の対象ではないこと、一般的な経済原則で動くものということが理解できるかと思います。
個人的に面白かったのは、感染症(はしか、結核、チフス、しょうこう熱)の死亡者数の推移でした。わたしたちはこれらの病気はワクチンや抗菌薬の接種で減っていったと思いがちですが、実はそうではなく、それらの接種開始の前から死亡者数は激減していました。
つまり、薬や医療のみがそれらの病気の被害を少なくしたのではなく、栄養状態の改善や衛生面の向上も大いに貢献していたというわけです。「アララ」と思ってしまいました。
あと医原病という言葉を憶えたのもこの本でした。「医者が増えれば病気が増える」−蓋し、名言であるかと思います。
最後に、本書では、過去のものとなった乳がん出術のハルステッド法施術後の写真が1枚掲載されています。本章ではその乳がん手術が全体的な死亡率の減少・生存率の改善に大きく貢献していないのに、ハルステッド法という患者に過酷な影響を及ぼすがん手術が続けられていた事に批判をしています。なんだかなあと思うはずです。
筆者の一貫する主張は、患者のメリットとデメリットをを比べて医療を受けるべきと述べます。ぶっちゃけ、必要なく医者にかかるなと述べた本書を一読すれば、現下の医療というシステム、薬について、健康というもの、がんといのち、老いるということについて、様々な示唆を得る事ができるかと思います。
医療というものについて理解を深める一冊。大メディアでは語られないテーマがずらりです。
「医原病―「医療信仰」が病気をつくりだしている」
(近藤 誠/著:講談社)
< 作成日 2010/02/20 >
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